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東京地方裁判所 昭和61年(ヨ)2273号 決定 1987年3月13日

申請人

加納昭

岩井曻一

西本泰通

鶴岡直芳

笹生亘

右訴訟代理人弁護士

葉山岳夫

菅野泰

内藤隆

山崎恵

竹之内明

市川昇

広瀬理夫

鈴木俊美

一瀬敬一郎

大口昭彦

阿部裕行

清井礼司

被申請人

日本国有鉄道

右代表者総裁

杉浦喬也

右訴訟代理人弁護士

秋山昭八

平井二郎

右指定代理人

小野澤峯蔵

室伏仁

西沢忠芳

佐々木雅夫

矢野邦彦

和田芳男

主文

本件申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人らの負担とする。

理由

第一  申請人らの求めた裁判

一  申請人らは被申請人に対し、いずれも雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  被申請人は申請人らに対し、昭和六一年三月から本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り別紙(略)請求金額記載の各金員をそれぞれ仮に支払え。

第二  被保全権利について

当裁判所は、申請人らの本件申請はいずれも被保全権利についての疎明がなく、かつ、これに代えて保証を立てさせることも本件事案の性質上相当でないとの結論に達した。

以下、その理由について述べる。

一  疎明資料及び審尋の結果によれば次の事実を一応認めることができる。

1  申請人らは、いずれも被申請人に雇用された職員であった者であり、かつ、国鉄千葉動力車労働組合(以下、「動労千葉」という。)の組合員である。被申請人(以下、「国鉄」ともいう。)は、日本国有鉄道法に基づいて設立された鉄道事業等を営む公共企業体である。被申請人は、申請人らに対し、同人らは動労千葉が行った後記争議行為に参画するとともに同闘争を指導し実施させたとの理由で、公共企業体等労働関係法(以下、「公労法」という。)一七条一項、一八条により昭和六一年三月二三日付けで解雇する旨の意思表示(以下、「本件解雇」という。)をし、以後、申請人らの雇用契約上の権利を争っている。

2  動労千葉は、被申請人の千葉鉄道管理局内の動力車に関係ある者で組織された労働組合であり、本件仮処分申請当時(昭和六一年五月)その組合員数は一〇六五名であって、本部のほか下級機関として一〇支部・青年部等を有している。

本部は、執行委員長、執行副委員長、書記長及び執行委員からなる執行委員会により構成され、大会又は委員会の決議の範囲内で組合員に指令を発する権限を有する。

下級機関として、千葉局内の機関区・電車区・運転区及びその他の動力車に関係ある業務機関毎に支部が設けられており、津田沼電車区には津田沼支部、千葉運転区には千葉運転区支部、千葉運転区成田支区には成田支部、銚子運転区には銚子支部、勝浦運転区には勝浦支部、館山運転区には館山支部が設けられているほか四支部がある。そして、各支部には支部大会、支部委員会、支部執行委員会の機関が置かれているが、支部においては本部大会、委員会で決定された方針及び本部発出の指示・指令を完全実施しなければならない。

3  動労千葉は、昭和六一年二月一五日始発時から午後五時三〇分まで、津田沼・千葉運転区・成田各支部を拠点とする旅客列車乗務員を対象とする指名ストライキ(以下、「本件争議行為」という。)を実施した。その経緯・態様等は次のとおりであった。

(一) 政府は、被申請人の経営する鉄道事業が財政的に破綻に瀕したため、その事業の再建を図ることとし、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法を制定した。同法に基づき、被申請人の事業に関し効率的な経営形態の確立のための方針等を検討することを任務とする日本国有鉄道再建監理委員会(以下、「委員会」という。)が設立され、委員会は約二年余の審議を重ねた上、昭和六〇年七月二六日、内閣総理大臣に対し「国鉄改革に関する意見」(以下、「委員会の答申」という。)を述べた。その要旨は、<1>昭和六二年四月一日をもって被申請人の事業を六つの旅客鉄道会社と一つの貨物鉄道会社に分割して民営化し(以上の各会社を総称して、以下、「新事業体」という。)、鉄道事業を経営しなくなった被申請人は清算法人に改組すること、<2>同日の新事業体の要員規模は約一八万三〇〇〇人とし、委員会の答申時の要員が約二七万六〇〇〇人であることから生ずる約九万三〇〇〇人の余剰人員については、約二万人について希望退職を募り、約三万二〇〇〇人を旅客鉄道会社に移籍し、その余の約四万一〇〇〇人については清算法人に所属させた上、三年以内に対策を講じて全員が再就職できるよう万全を期すること、<3>被申請人の長期債務の処理などを内容とするものであった。なお、同法六条によれば、内閣総理大臣は、委員会の意見を受けたときは、これを尊重しなければならないとされており、そこで、政府は、以後、委員会の答申の実現をその重要課題とし、かつ、国民の理解と協力をも得て速やかに実現すべく推進した。また、被申請人も政府の方針に沿って委員会の答申の実現に向けて業務及び要員の合理化等の諸施策を講ずることとなった。動労千葉は、委員会の答申に反対し、被申請人の分割・民営化阻止等を闘争目標に掲げて、昭和六〇年一一月二八日正午から翌二九日正午まで、千葉駅以西乗入れの旅客列車乗務員を対象とする指名ストライキ(以下、「第一波ストライキ」という。)を実施し、多数の旅客列車等の運転休止・遅延をもたらし国民生活に大きな影響を与えた。第一波ストライキに対しては、当時の被申請人の置かれた厳しい状況を弁えない蛮行として各新聞の社説等には参加者の責任を厳しく追及するよう求めるものが多くみられた。

(二) 被申請人は、昭和六一年三月三日、列車運行体係(ダイヤ)の改正を実施することとしたが、これに伴い合理化を行うこととし、昭和六〇年一二月二三日、動労千葉に対し、「車両検査周期の延伸及び検査体系の変更について」と題し、動力車乗務員四名、検修要員一二七名、構内要員二三名、合計一五四名の要員を削減する等の提案をした。右提案につき、動労千葉は、被申請人に対し、その撤回を求めるなどとともに団体交渉による解決を申し入れたため、被申請人は、昭和六一年一月二三日、動労千葉と団体交渉を行い、その際、「業務運営の効率化は必要不可欠である。」などとその要点を書面により回答するなどした。また、被申請人は、右ダイヤ改正に合わせて京葉線を暫定開業することとし、これに関連して首都圏管内の乗務分担を見直した結果、効率的な業務体制を確立するため業務の移管を行うこととし、同年一月一四日、動労千葉に対し、「乗務行路の受け持ち変更について」と題し、右ダイヤ改正に合わせ、千葉鉄道管理局(以下、「千葉局」という。)担当の乗務行路のうち、総武緩行・快速線、常磐・我孫子線の一部を東京西・南・北各鉄道管理局(以下、「東京三局」という。)に移管するとともに、千葉局において合計七四名の電車運転士の要員を削減する等の提案を行った。右提案につき、動労千葉は、被申請人に対し、団体交渉による解決を申し入れ、かつ、業務移管の根拠等の説明を求めたため、被申請人は、同年二月、動労千葉と専門委員会で協議を重ねた上、六日、一三日、一四日と団体交渉を行い検修要員に関して一部提案の修正をするなどしたが、動労千葉の要求と折り合わず、妥結には至らなかった。その間、被申請人は、右ダイヤ改正を円満に実施するため、動労千葉の反対はあったものの、東京三局所属の電車運転士に同局に移管される乗務行路の線路見習訓練(以下、「線見」という。)を実施した。

(三) 動労千葉は、昭和六〇年一二月一六日、第三回定期委員会を開催し、第一波ストライキの成果と意義を確認するとともに、全国鉄道労働者のゼネスト決起を実現するため、反弾圧・反処分、第二波闘争を皮切りに、第二、第三波の闘いに決起する方針を満場一致で決定した。昭和六一年一月九日、第五回支部代表者会議を開催し、不当処分粉砕、六一・三ダイヤ改正(車両検修体制の合理化と業務移管・線見)阻止を中心とする第二波闘争の貫徹に向けた当面する取組みについて確認し、このうち線見阻止闘争については、指名ストライキも辞さない決意で臨み、戦術の細部は執行委員会で決定することとした。次いで、同月二一日、第一四回執行委員会を開催して方針を決定し、各支部に対し、不当処分粉砕、六一・三ダイヤ改正阻止、第二波闘争へ向けて、ストライキを含むあらゆる戦術を行使できる万全の準備態勢を確立することなどを指令することとし、同月二三日、第六回支部代表者会議を開催して、これを伝達した上、各支部長に対し、翌二四日、指令第一二号をもって指令した。同月二八日、第一波ストライキに対する処分が発表されたのを受けて、動労千葉は、第二波ストライキへの決意を更に固め、同年二月六日、第一七回執行委員会を開催し、不当処分粉砕、六一・三ダイヤ改正阻止のため、同月一四日から一五日にかけてストライキを配置して闘うなどの戦術を決定するとともに、各支部に対し、同月一四日以降いついかなるときもストライキに突入できる準備態勢を確立することなどを指令することとし、翌七日、第七回支部代表者会議を開催して、これを伝達した上、各支部長に対し、翌八日、指令第一四号をもって指令した。このような中で、被申請人は、総裁、千葉局長名で同月一〇日、動労千葉に対し、ストライキの中止を申し入れたが、動労千葉は、これに従わず、同月一二日、第一八回執行委員会を開催して、<1>同月一五日に成田・千葉運転区・津田沼の各支部を拠点とする始発から二四時間のストライキを行う、<2>対象線区は総武快速・緩行線、成田線であるが、内房線、外房線なども千葉駅到着時点で乗務員は指名ストライキに入る、<3>受験期であることを考慮し、内房線・外房線などに朝夕数本の列車(以下、「受験列車」という。)には乗務員を乗務させるとする具体的な戦術を決定し、その旨を、執行委員長が記者会見して報道機関に発表した。次いで、同月一四日、深夜に至る前記団体交渉が決裂したのを受けて、執行委員長は、各支部長に対し、「津田沼、千葉運、成田支部及び関係支部は、二月一五日始発時より、所定方針通り全乗務員を対象とするストライキに突入すること。」との指令一五号を発した。そして、動労千葉は、右指令に従い、翌一五日、始発時から乗務員を対象とする指名ストライキに入り、執行委員長の各支部長に対する指令一六号により、同日午後五時三〇分をもって集約された。

(四) ところで、被申請人は、動労千葉からストライキの具体的な戦術について事前に通知を受けなかったことから、新聞報道や動労千葉のビラなどから知り得たところに基づいてその規模や内容を予測し、対応策を立てた。そして、前記のとおり、新聞報道によれば、動労千葉は、内房線・外房線など千葉駅に乗り入れる各線についても列車が千葉駅に到着すると同時に乗務員が指名ストライキに入るとされていたため、これが実施されると、当該列車が運行不能となるだけでなく、同駅や線路の収容能力が限られているため、後続の列車や同駅に乗り入れる予定の線区の列車も運行不能となり、同駅を中心に乗入線区とその周辺一帯の列車運行は連鎖的に麻痺状態に陥り、乗客を巻き込んだ大混乱が予想された。そこで、被申請人は、このような事態を防止するため、銚子・勝浦・館山各運転区において、動労千葉に所属する乗務員に対し、当日予定されている乗務行路全部について乗務する意思があるか否か、また、途中で予定の変更を命ぜられた場合や臨時の乗務を命ぜられた場合にも、これに応じて乗務する意思があるか否かを確認するため、始業点呼開始前に、「私は、昭和 年 月 日 時 分私の意思で就労することといたします。ついては、組合のストライキ指令に従うことなく、駅(区、所)長の命令する業務に従事いたします。」と記載された確認書に署名押印することを求め、これに応じた者についてのみ労務の提供を受けることとし、応じない者については完全な労務の提供をする意思がないものとして同時刻以降所定勤務終了時刻又はストライキ終了後業務復帰時刻まで欠務として取り扱うこととした。しかし、動労千葉に所属する右各運転区の乗務員は、全員、始業点呼などに際し、乗務の意思がある旨を明らかにしながらも、求められたところに従い確認書に署名押印することを拒否し、このため、被申請人は、右のとおり、その全員を欠務として扱った。

また、動労千葉の提案した受験列車については、千葉局において、全面運転休止も予想される中で、一、二本の列車を運転させてはかえって混乱が大きくなると判断し提案を拒否したため、運転されなかった。

(五) 本件争議行為により生じた列車の運行に対する影響は次のとおりであった。

運休 総武快速線 一六九本(特急六八本・快速一〇一本)

総武緩行線 一〇一本

総武本線 四八本(特急一四本・快速二本・普通三二本)

内房線 一〇五本(特急二〇本・快速一八本・普通六七本)

外房線 八〇本(特急二〇本・快速一四本・普通四六本)

成田線 一二五本(特急一四本・快速二八本・普通八三本)

鹿島線 三〇本(普通三〇本)

東金線 一二本(普通一二本)

遅延 総武快速線 五九本(最高三九分、合計八九二分)

総武緩行線 八六本(最高一九分、合計二九三分)

総武本線 一五本(最高二七九分、合計一二四〇分)

内房線 六本(最高二五分、合計一三〇分)

外房線 一四本(最高六三分、合計二一九分)

成田線 六本(最高二一八分、合計三二四分)

東金線 三本(最高一二分、合計二三分)

木原線 一一本(最高九分、合計六〇分)

久留里線 一〇本(九分、合計五一分)

なお、列車は、運休したものにつき、回送列車七五本、貨物列車三本を含むほか、すべて旅客列車である。また、総武快速線と千葉駅以東相互直通列車については、各線重複計上している。

(六) 本件争議行為に対する一般市民の反応は、新聞報道によると、過激派の同時多発ゲリラを伴った第一波ストライキ後間もないことであっただけに、怒りよりもむしろ呆れと諦めの表情が多くみられた。

4  申請人らの動労千葉における地位と本件争議における役割

(一) 申請人加納は、昭和六〇年一〇月以降、成田支部執行委員の地位にあり、本件争議行為の拠点支部の一つとなった同支部の中にあって指導的立場にある者であった。また、同人は、昭和六一年二月一五日、午前九時から午後四時一七分までの出勤予備者であったため、午前九時前、当直助役から、「当局の指示する全行程を乗務する意思があるか。」との質問を受けたのに対し、行程を示すよう要求し、助役がこれを示さないとして乗務意思の有無を示さず、被申請人から所定の勤務への就労を拒否したものとして扱われた。

(二) 申請人岩井は、昭和六一年二月九日以降、成田支部青年部長の地位にあり、同支部の青年部組合員の組合活動を推進する立場にあった。また、同人は、二月一四日午後六時一九分ころ、成田運転支区庁舎前において開催された動労千葉成田支部組合員による集会において、挨拶をし、青年部は最後まで闘うなどとその決意を述べ、また、「業務移管を粉砕するぞ。ストライキで粉砕するぞ。青行隊は闘うぞ。」などとシュプレヒコールの音頭をとるなどした。さらに、同人は、翌一五日、午後二時一九分ころから行った青年部組合員のデモ行進を指揮した上、乗務員室玄関前に整列した同組合員に「青行隊はこの闘争を大勝利にするため最先頭で闘って行きたいと思います。」などとその決意を述べ、また、前同様のシュプレヒコールの音頭をとるなどした。

(三) 申請人西本は、昭和五九年一一月以降銚子支部執行委員長の地位に、同鶴岡は、昭和五八年一〇月以降勝浦支部執行委員長の地位に、同笹生は、昭和五九年五月以降館山支部執行委員長の地位にあり、いずれも動労千葉委員会の委員及び支部代表者会議の構成員であり、本件争議行為に至る経過の中でこれを積極的に支持し、前記第三回定期委員会及び第五ないし第七回支部代表者会議に出席して前記のとおり決定及び確認するとともにそれぞれその支部組合員に対し前記確認書への署名押印を拒否するよう指導するなどして本件争議行為に参画するとともに、推進したものである。

二  右認定したところにより申請人らに対する本件解雇の効力について判断する。

1  動労千葉の行った本件争議行為が公労法一七条一項の禁止する公共企業体である被申請人の業務の正常な運営を阻害する行為に、また、申請人らの行為も同項の禁止する行為にそれぞれ該当することは明らかである。

2  申請人らは、公労法一七条一項及び一八条の各規定は憲法二八条に違反すると主張する。しかし、公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことは、既に最高裁判所の確定した判例の明示するところ(最高裁判所大法廷昭和五二年五月四日判決・刑集三一巻三号一八二頁参照)であって、当裁判所もこれを正当と考える。そして、公労法一七条が公共企業体の職員の争議権を全面的に禁止したからといって憲法二八条に違反しない上、その禁止に違反した職員に対し公労法一八条により解雇の不利益を課することとしても憲法二八条に抵触することはないというべきである。

また、申請人らは、被申請人は動労千葉との団体交渉を拒否し、また雇用安定協約の締結を拒否しているから、争議行為禁止の代償措置が機能せず、したがって、本件争議行為に対し公労法一七条、一八条を適用し申請人らを解雇することは、その限りにおいて違憲・無効である旨主張する。しかし、被申請人は、先に認定したとおり、昭和六一年三月のダイヤ改正に際し行うこととした検修合理化及び業務移管による要員減については、動労千葉の申入れに応じてその間に団体交渉を開催した上、口頭及び書面をもって誠実に回答していると一応認められるし、また、雇用安定協約を締結するか否かは、争議行為禁止の代償措置が機能しているか否かとは無関係というべきであるから、結局、申請人らの右の主張は採用できない。

3  申請人らは、本件解雇は被申請人の裁量権を濫用したものであるから無効である旨主張する。

(一) 本件争議行為の目的は、直接的には第一波ストライキに対する処分を粉砕し、かつ、昭和六一年三月のダイヤ改正(その際に行われる検修合理化及び業務移管による要員減)を阻止するというものであるが、その根底には被申請人の分割・民営化阻止という政治的目的があり、その違法性は極めて重大というべきである。

(二) 本件争議行為の規模・態様は、総武線と成田線を対象に乗務員の指名ストライキとして実施された相当大規模のものであり、その影響は、少なくとも総武快速・緩行線及び成田線に運休三九五本、遅延一五一本・一五〇九分と多数の旅客列車等の運休・遅延をもたらし、国民生活に大きな影響を与えた。しかも、右のような本件争議行為は、ほぼ同様の線区で実施され、当時の被申請人の置かれた厳しい状況を弁えないものとしてこれまでにない国民世論の厳しい非難を浴びた第一波ストライキから三箇月も経過しない間に国民世論を無視して敢行された。

(三) 申請人らは、動労千葉がこのような違法行為を敢行しようとした際、支部役員として、前認定のとおり積極的に参加し、これを推進したもので、その責任は重大である。以上の諸点を考慮すると、申請人らを公労法により解雇することとしたことをもって被申請人の裁量権の濫用とは認められない。

(四) 申請人らは、また、過去の争議行為における処分の前例と比較して、本件解雇は厳格に過ぎると主張するが、解雇権の行使が裁量の範囲を逸脱しているかどうかは、ストライキの規模、行為者の組合における地位等のみならず、行為時の客観的社会状況、行為に対する社会の評価等も総合的に考慮して決せられるべき問題であって、本件においては、申請人らの行為に対する社会全体の厳しい非難を考慮すると、前例と対比しても、本件解雇が社会通念に照らし、不相当なものとは認められない。

第三  以上のとおりであるから、申請人らの本件申請は、いずれもこれを失当として却下し、申請費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 白石悦穂 裁判官 林豊 裁判官 納谷肇)

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